最後の幻―北の王と南の王の戦い[ダニエル11章]

ダニエル書
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北はシリアのセレウコスまたはアンティオコス、南はエジプトのプトレマイオスの対戦で、これは反キリストによるハルマゲドンまで持ち越されます。

※途中「アンティオコス3世はシリアを破った」と言いましたが、「ローマのルキオス・スキピオはアンティオコス3世率いるシリアを破った」の言い間違いです。

最後の幻―北の王と南の王の戦い[ダニエル11章]

最後の幻―北の王と南の王の戦い[ダニエル11章]

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【原稿】
ダニエル書10章から12章はすべてダニエルに与えられた最後の幻であって、各章が大戦争についての内容。10章が天使たちの戦い。11章が北の王と南の王の戦い。12章はイスラエルに対する戦い。11章の内容が最も複雑であって世界史の知識を動員しなければほとんど何が何やらわからない。しかし、世界史に照らせば、すべてこの預言の通り展開されてきたことを知ることができる。そして、11章の内容には未来に関する内容も含まれるが、過去の預言がすべて成就したのなら、未来について必ず成就することになると信じることができる。

1節。イスラエルに味方する大天使ミカエルのこと。恐ろしい戦いは世界の終わりまで続くが、私たちには強力な味方がいることを改めて覚えよう。
2節。「真理を告げる」と天使は言う。そして、真理の内容は歴史である。聖書の真理は抽象的な概念やひねくれた哲学、もったいぶった教えに満ちたものではないのだ。聖書でいうところの真理というのは歴史的な事実に基づくものだ。重要な真理であるイエス・キリストの受肉、十字架の死と復活、昇天、聖霊降臨はすべて歴史的事件だ。特に復活が歴史的な事実であることは真剣に追及した人が一様に認めることだ。そして聖書の真理における歴史には、私たちの人生も含まれている!私たちと関係がある!私たちを取り巻く世界は聖書預言のすべてが成就するように、神様の導きの中で今日も動いている。「ペルシアになお三人の王が立つ。」キュロス王に続く三人の王の名前はエズラ記4章に出てくる。6節、クセルクセス、7節、アルタクセルクセス、24節、ダレイオス。歴史家にはカンビュセス、スメルディス、ダレイオス・ヒュスタスペスとして知られている。第四の誰にもまさって富み栄え、ギリシアに侵入したのはエステル記のクセルクセス王だ。クセルクセスの時期にペルシアの版図は最大になった。エステル1:1。彼が非常に富んでいたことはエステル記を読むとよくわかる。貴族たち向けには酒宴を180日も開き、さらに身分を問わずに招いて7日間酒宴を開いた。この酒宴はギリシア遠征の協力をあおぎ、士気を高めるためのものだった。クセルクセスは紀元前480年にギリシアに侵入したが都市国家の決死の抵抗にあい、アテネの水軍にサラミス湾での戦いで大敗した。帰国後、クセルクセス王はエステルと結婚した。
3節。ペルシアの圧迫を跳ね返すべくギリシアで立ち上がった勇壮な王はアレクサンドロス大王だ。クセルクセス王からアレクサンドロス大王まで144年の空白がある。これは西洋的な感覚だと理解しがたいが、これがヘブル的な表現なのだ。ヘブライ語の文章では、期間がどれほど長くても要点だけに短縮することが多々ある。アレクサンドロス大王は少数精鋭の軍隊で東方遠征を行い、エジプト、ペルシア、果てはインドまでほしいままに征服した。
4節。アレクサンドロス大王は若くして死んだ。すると、アレクサンドロス大王の部下の四人の将軍はアレクサンドロスの息子を殺し、王国を四つに分割した。四つの王国と四人の将軍の名前はシリアを中心とするセレウコス、これが北の王、エジプトを中心に支配するプトレマイオス、これが南の王、小アジアを支配するリュシマクス、ギリシアを含むマケドニアを支配するカッサンドロスだ。以後の預言では北のシリアと南のエジプトの2つの王国だけが触れられている。なぜならこの2つの王国だけがイスラエルと関係あるからだ。イスラエルは北と南の王国に挟まれて荒らされた。
5節。このときの南の王はプトレマイオス1世ラギだ。イスラエルは最初シリアの領土だったが、プトレマイオス1世ラギは紀元前320年にそのシリアを攻略し、安息日には戦争すらしないユダヤ人の慣習を悪用して安息日にエルサレムを占領してしまった。彼よりも強くなった将軍は北の王であるセレウコス1世ニカトルだ。彼はシリアを首都として北の国を治めていたが、一時期アンチゴヌスにシリアを追い出されてプトレマイオス1世のもとに身を寄せていた。その後アンチゴヌスを倒してシリアに返り咲き、さらにカッサンドルを破ったリュシマクスを倒して他の二つの王国も手中におさめ、イスラエルもエジプトから取り返した。セレウコス1世の領土はエジプトを除いて、ギリシアからインダス川まで、アレクサンドロス大王が領有していたほとんどの領土を支配した。
6節。ダニエルから数百年後の政略結婚について。こういうことを知るのは神だけ。長期にわたる戦争によって疲弊したシリアとエジプトは政略結婚によって和睦をはかった。南の王であるプトレマイオス2世フィラデルフォスの娘ベルニケが北の王であるセレウコス朝のアンティオコス2世テオスと結婚した。この政略結婚はアンティオコス2世が妻のラオディケと離婚し、2人の王子を王位につかせないことを条件になされた。この結婚は悲劇で終わる。アンティオコス2世と南の王の娘ベルニケはラオディケに毒殺された。ラオディケはベルニケのすべての子供と従者たちを殺し、自分の子供のセレウコス2世カリニクスが王座につけた。これが、「彼女も、供の者も、彼女の子らも、その支持者らも裏切られる」の預言の成就。
7-8節。ベルニケから出た「根」とは、彼女の兄弟プトレマイオス三世ユーエルゲーテス。彼は妹ベルニケの復讐をした。彼はイスラエル、アンティオキア、バビロンを攻略し、妹を毒殺したラオディケを殺した。そして、そこにあった偶像や貴重な財宝を略奪してエジプトに凱旋した。偶像好きなエジプト人はそれを喜んだだろうが、略奪の対象となる偶像とそれを崇拝の対象とすることの愚かさがわかる。「その後何年か、北の王に手を出さなかった」のはエジプトで勃発した内乱の鎮圧に力を注いでいたからだ。
9-10節。北の王のセレウコス2世カリニクスはエジプトに復讐しようとしたが、戦果をあげられずに引き上げた。北の王の息子たちはセレウコス3世・セラウヌスとアンティオコス3世・マグナスだ。セレウコス3世は軍隊を指揮する力がなかったので部下に毒殺されてしまった。代わって弟のアンティオコス3世が即位した。アンティオコス3世は大軍を編成して南の国に侵入し、イスラエルを占領し、「敵の城塞」と書いてあるエジプトのガザの城を攻略した。
11-12節。激怒して出陣した南の王はプトレマイオス4世・フィロパトール。北の王のアンティオコス3世は7万人の大軍を率いたにもかかわらず紀元前217年のラフィアの会戦で、プトレマイオス4世に敗れた。勝利したプトレマイオス4世はこのときイスラエルを奪還する。しかし、このときプトレマイオス4世はユダヤ人の歓心を買うために神殿で生け贄をささげ、さらには大祭司だけが年に一度だけ入ることを許される至聖所に入ろうとして阻まれ、さらに強行しようとして失神した。プトレマイオス4世は息を吹き返すとユダヤ人数千人を虐殺した。その後、まもなく気が狂ってしまい、彼と王妃は変死した。これが「決定的に勝つことができない」の預言の成就。エジプトではわずか5歳のプトレマイオス5世・エピファネスが即位した。
13-14節。幼い王が即位したのを好機と考えた北の王であるアンティオコス3世は紀元前205年に前よりももっと多い軍隊を率いてエジプト攻略に乗り出した。その際には一部のユダヤ人がアンティオコス3世と同盟を結んで敵対勢力を倒そうとしたが失敗した。これが「お前の民の中からも、暴力に頼る者らが幻を成就させようとして立ち上がるが、失敗する」の預言の成就。
15節の「南の王はこれに抵抗する力を持たず、えり抜きの軍勢も立ち向かうことができない」はエジプトの将軍スカパスが10万の軍勢を率いたのに敗北したことを指す。
16節。アンティオコス3世は「麗しの地」であるイスラエルに侵入したが、ユダヤ人に対して好意を示した。
17節。彼は紀元前198年に南の国であるエジプトのすべてを支配しようとした。そのための手段としてアンティオコス3世の娘のクレオパトラが南の王プトレマイオス5世・エピファネスと婚約させた。クレオパトラはほんの小さな子供だった。アンティオコス3世は娘にスパイ活動をさせて、エジプトを滅ぼそうとしたが、クレオパトラが逆に夫である南の王を愛するようになり、夫を助けて父アンティオコス3世逆らうようになったので頓挫した。ダニエル11章には二つの政略結婚が出てくるがどちらも狙い通りになっていないことがわかる。ここから得られる教訓は結婚を野望の実現するための道具にしてはならないということだ。

18-19節。アンティオコス3世はエジプト征服に失敗したので、次に西方に目を向け、小アジアの海岸から離れている数個の島を征服した。ある軍人はローマの将軍ルキオス・スキピオ。紀元前190年にマグネシアの会戦でアンティオコス3世のシリア軍を破った。この敗戦の結果、ローマから毎年1千タラントンの罰金を課せられることになった。そこで、彼は自国内の寺院から財宝を徴収したが、領民の怒りを買って殺された。
20節。この北の王は、セレウコス4世フィロパメール。彼の統治はアンティオコス3世よりもずっと短命だった。彼はローマに罰金をおさめるために、ユダヤ人から重税を取り立てて憎まれた。彼はヘリオドルスという大臣に「エルサレム神殿から財宝を略奪せよ」と命じたが、そのヘリオドルスに毒殺されて、預言通り「怒りにも戦いにも遭わず」滅び去った。
21-35節は反キリストの型であるアンティオコス4世・エピファネスだ。この人物についてはすでに8章で預言されたが、さらに詳細に語られる。21節でどのような人物でどのようにして北の国の王座についたのかが明かされる。彼は卑しむべき者、つまり軽蔑すべき者だ。もともとは王位から遠い人物だったが、へつらいと策略によって王座を得た。反キリストも本性を隠して人々から仰がれるが、本当は軽蔑すべき人物だ。22節。アンティオコス・エピファネスは契約の君とあるユダヤの大祭司オニヤス3世を打ち破り、代わりにお金さえ与えれば自分の意のままになる異邦人の大祭司ヤソンを立てて、ユダヤ人を圧迫する。23節。アンティオコス・エピファネスは多くの小国と平和条約を結んで油断させておき、自分に力がついたら一方的に条約を破って侵略することを常套手段とした。反キリストが多くの国々やユダヤ人と契約を結んでおきながら、後で破棄するやり方をここに見ることができる。25-26節。この時の南の王はプトレマイオス6世・フィロメトール。プトレマイオス・フィロメトールは大軍を率いてアンティオコス・エピファネスに抵抗するが、自分の部下の裏切りによって敗北した。27節。アンティオコス・エピファネスとプトレマイオス・フィロメトールは食卓について陰謀を企てるが、互いに偽りを言って成功しない。食卓は本来親交を深めるものなのに、悪人たちにとっては油断させて互いの寝首をかくものとなってしまう!
28節。アンティオコス・エピファネスは紀元前168年にイスラエルに侵入し、エルサレムを攻め、多くのユダヤ人を殺し、神殿の貴重な宝物を奪った。29-31節。アンティオコス・エピファネスはもう一度エジプトに攻め込むが最初のようには行かなかった。キティムの船隊とあるローマの艦隊によって妨げられたのだ。キティムというのはキプロスのことだが、イスラエルから見て地中海の奥にあることからギリシアやローマをも意味する。その腹いせに、アンティオコス・エピファネスはユダヤの地で悪事を行った。多くの背信のユダヤ人が彼に味方した。すべての動物の献げ物は廃止され、ユダヤ教の儀式を禁止した。神殿の器具は律法で汚れた動物とされる豚の血によって汚され、神殿そのものもゼウスに献げられてしまう!
32-35節。当時のユダヤ人がアンティオコス・エピファネスに対してどうしたか?ユダヤ人には二種類の人々がいた。ある人々は背教者たちで、アンティオコス・エピファネスの圧迫に屈して律法を破棄した。中にはアンティオコス・エピファネスについて積極的に律法を破るように人々に強制する者もいた。他の人々は自分の神を知る民、目覚めた人々だ。彼らは迫害に屈することなく、神の掟を破るくらいなら死を選んだ。それで多くの人々が殉教した。アンティオコス・エピファネスに抵抗する指導者として立ち上がったのは祭司マタティアと5人の息子たちだ。特にマカバイと呼ばれるユダが活躍した。ろくな訓練も装備もない祭司に率いられた軍隊が、完全武装した軍隊を次々と破って神殿を奪還した。しかし、神殿奪還後もユダヤ人の試練は終わらない。各時代に試練を通り、最後には大患難時代を通過しなければならない。それが「終わりの時に備えて練り清められ、純白にされる」の意味するところだ。「まだ時は来ていない」というのはメシアの再臨のことだ。それまで、試練は続く。迫害に遭うときに信仰に踏みとどまることができたのは、32節によると自分の神を知る民だ。神を個人的に知る人は何があってもぶれることはない!あなたは自分の神を知っているか?その方と人格的に出会い、親しい交わりを持っているか?
そうであれば、あなたもすべての試練をパスすることができるだろう。神を知り、試練において勝利する者となろう。35節までの預言はすべて文字通り詳細に、正確に成就してきた。このことから残る節についてもやがて成就することになることがわかる。
36-45節について、世界史の中で成就したものは見当たらない。そのため、これらはすべて未来の出来事であることがわかる。つまり、35節と36節の間には2千年以上の時間的な隔たりがあるのだ。繰り返しになるが、ヘブライ語の文章では、期間がどれほど長くても要点だけに短縮することがままある。36節。あの王=反キリスト。36-45節までで反キリストの多くの特徴を知ることができる。1.「36節:ほしいままにふるまい」→わがままな王。彼は他人の考えを承認しない。常に父の御心を行ったイエス様と対照的だ。2.「36節:どのような神よりも自分を高い者と考え」テサロニケⅡ2:3-4。この高ぶりも神に等しい身分でありながらへりくだって人間となられた主イエス様と対照的だ!3. 「36節:怒りの時が終わるまで栄え続ける。」怒りの時は主に大患難時代の後半の三年半だ。キリストの永遠の王国と違って長続きしない!4.「38節:先祖の知らなかった神、すなわち砦の神をあがめ」。反キリストは偽預言者を立てて、世界統一宗教を造り、宗教的権威と軍事力の結集を象徴する新興宗教によって人々を心身ともに支配する。5.「39節:気に入った者には栄誉を与えて多くの者を支配させ、封土を与える。」この偽メシアはメシアの物まねをして、主が御自分に仕える忠実な者に豊かな報いを与えるかのように、栄誉と土地を与える。
40-45節はハルマゲドンの戦いに至る道筋。北の国の王である反キリストに対抗する勢力である南の王が戦いを挑むがこれは失敗する。この戦争に乗じて反キリストはイスラエルを侵略し、アフリカの国々にも手を伸ばす。この侵略戦争には世界のその他の勢力も黙ってはおらず、反キリストは東と北からの知らせに危険を感じる。そして45節。反キリストは地中海とエルサレムとシオンの山でハルマゲドンの戦いを行う。黙示録16:16。「しかし、ついに彼の終わりの時が来るが、助ける者はない。」キリストが再臨して反キリストの統治は終わる!

イスラエルを見ていると、国々の戦いの舞台となることによって何度も何度も侵略され、荒らされ続けていることがわかる。力のない小さな国で、敵の攻撃を跳ね返すことはできない。マカバイ戦争での独立後も、1948年のイスラエル再建後も試練は終わらない。「神の民なのになぜ?」と理解に苦しむだろうか?それはイエス・キリストにも見られるもの。イエス・キリストも神御自身でありながら十字架で最大の苦しみを負われたが、三日目に復活された。同じようにイスラエルにも苦しみの後、復活の栄光が待っている。そして、私たちの人生でも、すべての苦難は比べ物にならないほど重い永遠の栄光につながることが保証されている。

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